近年、タイにおけるシステム開発の需要は急速に高まっており、業務システムやWebサービスの導入が進む中で、「セキュリティ」は避けて通れないテーマとなっています。特に日系企業にとっては、現地特有のリスクや体制の違いを踏まえた対策が求められます。
セキュリティ問題の多くは「技術」より「運用」にあり
一般的にセキュリティの話題になると、最新の暗号技術や堅牢なフレームワークの採用など、技術的な話に焦点が当たりがちです。しかし、実際に問題が起こる原因の多くは「属人的な運用」にあります。
たとえば、開発者が個人のクラウドストレージにソースコードを保存していたり、パスワードを紙に書いてデスクに貼っていたりといった事例は、タイ国内でも少なくありません。2023年8月10日、タイの名門チュラロンコン大学(Chulalongkorn University)は、ランサムウェアグループ「LockBit」によるサイバー攻撃を受け、情報漏洩の被害を受けました。この攻撃により、大学の公式ドメイン(chula.ac.th)に関連するデータが不正に取得されました。詳しい原因、規模については公表されていませんが、技術的には標準的な構成でも、運用の甘さが命取りになります。
参考:https://www.breachsense.com/breaches/chulalongkorn-university-data-breach/?utm_source=chatgpt.com
タイにおける“人の良さ”が裏目に出ることも
タイでは、スタッフ同士の信頼関係が強く、良好な人間関係が業務を円滑に進めるうえで重要とされます。ただしその反面、「仲間だから」「頼まれたから」といった理由で機密データを軽く扱ってしまう傾向も否めません。
例えば、以下のようなケースが実際に発生しています:
- 退職時にUSBで業務データを持ち出し、競合企業に転職後そのまま利用
- 友人が「勉強の参考にしたい」と言ったことから、業務アプリの管理画面を無断で共有
- 個人用スマホで社内チャットやファイルを扱い、家族や友人の目に触れる可能性が生じる
これらは悪意というよりも「意識の違い」から起こることが多く、事前のルールづくりや教育が非常に重要です。
対策の基本は「体制づくり」
こうしたリスクに対応するには、以下のような基本的かつ効果的な対策が有効です。
- 権限の明確な切り分け:管理者・利用者・開発者の権限を適切に設計する
- 二段階認証の導入:特に管理画面やクラウドアクセスに有効
- 従業員向け教育の実施:現場でのセキュリティ意識を高めることが長期的な防御に
特にタイでは、形式的な規則よりも「なぜそれが必要なのか」を伝えることが効果的です。
弊社のサポート体制:現場主義で柔軟に対応
私たちは、タイ国内におけるシステム開発とセキュリティ対策の両方に精通しています。まずは現状のIT環境や運用フローをヒアリングさせていただいた上で、高度なセキュリティ設計から現場目線の実現性重視の改善案まで、最適な対応をご提案いたします。
「セキュリティ対策=高額で難しい」と考えがちですが、実は現場にあった“小さな改善”の積み重ねが、大きな事故を防ぐ一歩になります。
身近なツールでも、できることはある
「セキュリティ対策」と聞くと、何か特別なツールや新たなシステム導入が必要だと思われがちですが、実は多くの企業がすでに導入しているMicrosoft 365(TeamsやOutlookなど)にも、セキュリティ強化のための設定が備わっています。
たとえば:
- Teamsのチームやチャネルごとの閲覧・編集権限設定
- 外部共有の制御(誰が何を共有できるか)
- Outlookでの機密メール機能や自動ラベル付け
- モバイル端末からのアクセス制限や多要素認証の活用
こうした機能を“ちゃんと設定するだけ”で、実は多くのリスクが軽減できるのです。
弊社では、これら既存ツールの設定支援も行っております。
「今のままで大丈夫かな?」と少しでも感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
現状を把握し、小さなことから始めるだけでも、大きなトラブルを未然に防ぐ一歩になります。
参考
アイキャッチ画像:Unsplash