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タイの工場システムで、日本語・タイ語・母語をどう使い分けるか

タイの工場でシステムを本番運用しようとすると、必ず出てくる問いがあります。「言語は日本語とタイ語で足りるのか、それとも英語も要るのか、あるいは作業員の母語まで対応すべきか」。
実際には、これは 3 択で選ぶ話ではなく、"同じシステムに 3 層の言語構造を組む" のが現実的だと考えています。日本人管理者、タイ人現場リーダー、多国籍の作業員 — この 3 層は、必要な情報も、認知負荷を許容できる量もまったく違います。翻訳を機械的にかけるだけでは、現場のどこかで必ず詰まります。
本コラムでは、この 3 層構造をどう設計するかを、当社が 多拠点対応 設備点検 SaaS システム で辿り着いた考え方としてまとめます。
労働者構成例
タイの製造業では、現場労働者の国籍が想像以上に多様化しています。工場によりますが、以下のような構成が普通に見られます。
- 日本人管理者・駐在員: 数名〜十数名
- タイ人現場リーダー・スタッフ: 数十〜数百名
- 外国人労働者: ミャンマー、カンボジア、ネパール、ラオス、フィリピンなど
ここで「タイ語対応させれば十分」と思って UI を作ると、実際は多くの外国人労働者が読めません。タイ語を流暢に読めるのは主にタイ人スタッフだけ、というのが実態です。かといって全員に英語を強制するのも、教育コストの割にワークしません。
3 つの層
層 1: 日本人管理者
拠点全体の集計、傾向、異常検知、経営判断に必要な指標。日本本社への月次レポート。使用言語は日本語。
この層は情報密度が高くて構いません。管理者は毎日ログインし、複数画面を横断して見比べる前提の UI を作ります。文字量が多くても、慣れれば読めます。
層 2: タイ人現場リーダー
マスタメンテナンス、権限管理、シフト調整、作業割当、日次レポート出力。使用言語はタイ語 (英語がフォールバック)。
この層はタイ人の現場責任者が使います。業務ロジックの理解は深いですが、日本語は読めません。中密度の UI で、業務知識前提の言い回しは OK です。
層 3: 外国人作業員
QR スキャン、チェックリスト回答、始業・終業報告、簡単な数値入力。使用言語は作業員の母語 (ミャンマー語、カンボジア語、ネパール語、ベトナム語など)。
この層は "できるだけ文字を読ませない" UI にします。ボタンを押す、QR をスキャンする、○/× を選ぶ、といった単純な操作を並べる。文字は最小限にして、色・アイコン・番号で認識できるようにします。文字を読む必要が出てきた瞬間、そこは各作業員の母語で表示する。
ここで多言語対応が効いてきます。10 言語超に対応しておけば、雇用構成が変わっても UI を作り直さずに済みます。
設計原則
3 層を分ける上で一番大事なのは、同じ画面を 3 言語に翻訳しないことです。各層で見る画面そのものが違う、という前提を最初から持ちます。
層 1 の管理者ダッシュボードと、層 3 の作業員スキャン画面は、そもそも別のアプリでいい。同じデータベースを見ますが、UI としては別物として設計します。この方針を最初に固めておかないと、後から "翻訳が長くて画面が崩れる" "作業員がボタンを見つけられない" といった問題が出ます。
翻訳の運用
翻訳作業の運用サイクルも、層ごとに別に考えます。
- 層 1 (日本語): 内部で書ける。運用サイクルは長い。文言変更もそう頻繁ではない。
- 層 2 (タイ語): タイ語ネイティブレビューが要る。運用サイクルは中。マスタ項目名や業務用語の追加が定期的にある。
- 層 3 (少数言語): 表示テキストが少ないので、追加コストは実は低い。ただしレビューが難しい (社内にネイティブがいないことが多い)。翻訳サービス経由 + 現場でのユーザビリティテストで補正する。
タイ語 UI の実装
細かい話ですが、タイ語 UI で毎回ぶつかる項目を書いておきます。
- 単語区切りがない: 改行位置を CSS で明示的に制御しないと、画面がガタガタになる
- 文字数が横に長くなる: 日本語より横に伸びがちなので、ボタンやテーブルの幅は余裕を持つ
- フォント: 声調記号・母音記号が付くので、フォント選定次第で行間が破綻する
- ソート順: タイ語のアルファベット順は独自 (子音・母音の並び)。単純な文字コード順ソートだと現場感覚と合わない
- 日付・数字: 仏暦 (2568 年 = 西暦 2025 年) を使う場面もある。表示形式を選べるようにする
費用感
「10 言語対応」と聞くと大掛かりに感じますが、層 3 は表示テキスト量がもともと少ないので、追加コストは 1 言語あたり数千〜数万 THB のレンジに収まることが多いです。
作業員の国籍構成が変わったときに UI を作り直さずに済む、というのが 3 層設計の最大のメリットです。
まとめ
タイの工場システムを多言語対応させるとき、「タイ語だけ」でも「英語だけ」でも「全員英語で我慢してもらう」でもなく、日本人管理者・タイ人現場リーダー・外国人作業員の 3 層に分けて設計する — この方針を持つと、後々の運用が大きく楽になります。
当社の 多拠点対応 設備点検 SaaS システム は、この 3 層構造で設計した結果、日本語・英語・タイ語・ベトナム語・ネパール語・シンハラ語・中国語・スペイン語・セルビア語・ベラルーシ語など 10 言語超に対応しています。現状はタイ国内での運用ですが、同じ構造で作られているため、多国籍作業員が働く海外拠点への提案・展開も想定した状態で作ってあります。
関連: 多拠点対応 設備点検 SaaS システム / 工場業務改善システム / 工場現場システムのオフライン設計
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